後立山(長野/富山) 唐松岳(2695.9m) 2023年7月31日  カウント:画像読み出し不能

所要時間  1:57 林道終点−−2:18 黒菱平−−2:42 八方池山荘−−3:19 八方山−−3:57 扇雪渓−−4:15 丸山ケルン−−4:55 2650m峰−−5:10 唐松岳 5:37−−5:56 2650m峰−−6:28 丸山ケルン−−6:43 扇雪渓−−7:27 八方山−−8:09 八方池山荘−−8:25 黒菱平−−8:34 林道終点

場所長野県北安曇郡白馬村/富山県黒部市
年月日2023年7月31日 日帰り
天候快晴後ガス
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場林道終点に無料駐車場あり。ただしハイシーズンには満車になることがあるので注意
登山道の有無あり
籔の有無黒菱平〜リフト終点駅間は笹等のはみ出しあり。笹が濡れている時は雨具必携
危険個所の有無無し
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント今年初の唐松岳へ。平日の月曜日なのに登山者が多くてびっくり。八方池周辺は固有種を含めて花の種類、数とも多く、事前に勉強してから訪問すると大いに楽しめるだろう。概ね扇雪渓より先は通常の北アルプスで見られる高山植物に切り替わる。今回は空気の透明度がイマイチで志賀高原、八ヶ岳、富士山、南アルプスは全く見えなかった


八方尾根固有種のハッポウタカネセンブリ。通常のタカネセンブリは白馬岳でも見られるそうだが未だ見つけたことがない(非常に残念!)
充電忘れでGPS電池切れのため往路の大半でログ欠損


林道終点駐車場 八方池山荘
水源らしき場所。往路では水があふれていた 白馬村市街地の夜景
丸山ケルン 五竜岳
ここで尾根道に移行 ミヤマアキノキリンソウ
ハクサンシャクナゲ 2650m峰で日の出を待つ人々
2650m峰から見た唐松岳 唐松山荘。月曜日なのでテントは僅かだった
日の出の時刻から遅れて山頂到着直前に雲の上から太陽が出た 朝日が当たった唐松岳山頂
唐松岳山頂 唐松沢の雪渓。氷河と確認されている
唐松岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
唐松岳から見た槍穂、裏銀座方面
コケモモ 毛が無いのでイワギキョウ
鳴かない、動かない雷鳥を遠くに発見。ラッキー! 拡大。メスだが子はいなかった
唐松山荘へのトラバース斜面にコマクサがある 終わりかけの駒草
毛があるのでチシマギキョウ 2650m峰。背景は五竜岳
ミヤマクワガタ イワツメクサ。ここでは数が少ない
ゴゼンタチバナ 八方尾根を下る
ミヤマダイコンソウ。花はほぼおしまい 葉の付き方からしてカンチコウゾリナっぽい
タカネヤハズハハコ コバイケイソウ
タカネヨモギ ミヤマホツツジ。象の鼻のよう
ニガナ ウサギギク
オトギリソウだが細かな種類は私では判別不能 オヤマリンドウ
アカモノ ネバリノギランだと思う
丸山ケルン チングルマとイワカガミが主役のお花畑
ムシトリスミレ。その名の通りスミレなのに食虫植物という珍品。こんな時期に高山で咲いている紫系のスミレは珍しい
アオノツガザクラ ミヤマキンバイ
エゾシオガマ 扇雪渓。周囲は岩ゴロゴロで花が無いのが残念
ミヤマキンポウゲ。散る間際だと花びらに隙間が空くようだ ミヤマキンポウゲ群落
モミジカラマツ ヨツバシオガマ
ハクサンタイゲキっぽい。正確な判別には色々な部位の写真が必要 トリカブトの蕾
タテヤマウツボグサ。多く見られる マルバダケブキ。実はフキではなくオタカラコウの仲間だった!
シモツケソウ オニシモツケ
キソチドリかと思ったがタカネサギソウっぽいが自信なし クルマユリ
ハクサンチドリ ミヤマアズマギク
イブキジャコウソウ ハッポウタカネセンブリ。今年もたくさん見られた
カライトソウ ハクサンシャジン。八方尾根を代表する花
イワシモツケ。私が登る北アでは八方尾根でしか見られないので、なかなか名前を覚えられない
クモマミミナグサの花。個体によって切れ目の深さが異なるが、5枚の花弁にそれぞれ切れ目が入って10枚に見えるのが特徴
ハッポウウスユキソウの方が葉が細く斜め上を向いているそうだが、事前に違いを勉強しておかないと違いが分からない程度に微妙
キンコウカ ニッコウキスゲ
タカネナデシコ ムラサキタカネアオヤギソウらしい
これもムラサキタカネアオヤギソウかな? ハクサンオミナエシ
タカネマツムシソウ ヤマホタルブクロ
ミヤマダイモンジソウ ミヤマムラサキ
ミヤマコゴメグサらしいがコゴメグサの種類判別は困難 キバナノカワラマツバ
ミヤマウイキョウ 八方池
ホソバツメクサ ウメバチソウ。山ではもう秋が近いか
八方池まで下るとガスがかかる オオバギボウシ
キンコウカの群落 ミヤマママコナらしい。ママコナには数種あり判別が難しい
タカネアオヤギソウかな 公衆トイレ
エゾシオガマ ワレモコウ
帰りは稜線ではなく南を巻く木道を下った オオコメツツジ
クガイソウ 白花のヤマホタルブクロ
八方池山荘 ホツツジ
黒菱平 黒菱平からリフト終点を見上げる
林道脇のシモツケ 林道脇のヨツバヒヨドリ
林道脇のオオバギボウシ 林道脇のノコンギク
駐車場到着


 好天が予想された月曜日を自主的なお休みに設定。土曜日の白馬岳に引き続いて高山植物を愛でるために今度は八方尾根経由で唐松岳に。もう黒菱林道は開通して終点まで車で入れるので、山頂で日の出を迎えるためにリフトを使わず夜間出発が可能である。

 睡眠時間確保のため夕方に現地入り。駐車場には20台程度の車があるが唐松山荘宿泊者であろう。日曜夜としては結構な多さである。東側に高まりがあって朝の陽ざしが避けられる場所に駐車して睡眠。土曜日の疲労があるので通常より時間はかかるだろうが、唐松岳までの標高差は約1200mなので所要時間は3時間強だろう。夜中2時に出発すれば日の出直後に山頂と着できると思う。

 夜中1時過ぎに起床、飯を食って満天の星空の元で出発。黒菱平へ通じるゲートが閉じた砂利道の林道入口には新たな標識が追加され「この道は登山道ではないので関係者以外の立ち入りは遠慮下さい。もし立ち入って何かあっても責任は取りません」との趣旨の文言が書かれていた。昨年は無かったもので、もしかしたらこの林道で怪我等をして管理者とモメた輩がいたのかもしれない。小心者には気になる看板だが自己責任ととれる表現もあるので立入禁止ではなかろうとそのまま足を進めた。

 相変わらず最後は急な登りで登山道以上の傾斜であり、車で登るのも大変だろう。黒菱平から湿原の遊歩道=正式登山道に入って一安心。例年通りキンコウカが花盛りだった。傾斜が緩んでリフト終点と八方池山荘に達すれば八方尾根特有の高山植物帯に入る。まだ真っ暗な時刻なので写真撮影は帰りに行うことにして、往路は尾根上の登山道を進んでいく。この時刻に歩いている登山者はいないと思っていたが尾根上方に光を発見。林道歩きや黒菱平で光が見えなかったので30分以上の先行に違いない。

 昨年はこの付近では非常に多くのハクサンシャジンが咲いていたが、今年は明らかにその数が少なくなっていた。もしかしたら針ノ木岳同様に花の盛りの当たり年があるのかもしれない。稜線では初秋の花であるタカネマツムシソウがたくさん咲いていた。

 先行者の光は徐々に接近して八方池付近で追い付くと男性2人であった。話によるとまだ先行者がいるとのことで、もしかしたら日帰りで遠見尾根経由、鑓温泉経由、大雪渓経由のいずれかで周回するのかもしれない。

 一度樹林帯に入るとハクサンオミナエシが目立つ。登山道が尾根上から南斜面に移るとミヤマキンポウゲは最終盤だった。高山に咲くミヤマキンポウゲと低い標高に咲くウマノアシガタの違いは花びらが重なるか間隔が空いているかだとネットの記事にあったが、ミヤマキンポウゲでも花のピークを過ぎて散り際近くになると花びらの間隔が空くので、この見分け方は使えない。

 扇雪渓を通過してジグザグに登って森林限界を突破してハイマツ帯に入る。この先は八方尾根特有の蛇紋岩質が終わって通常の高山と同じ植生に変わり、花も北ア全般で一般的に見られる種類にバトンタッチだ。前方の視界が開け遥か先にライトの光が見えたが差は1時間近くありそうで追い付くことはなさそうだ。五龍山荘付近にも光が見えた。南寄りの風がややあって寒さを感じるようになり、ある程度の防寒装備を着用する。

 今の時期の日の出は午前5時近いため午前4時ではまだ真っ暗。ただし東の空は赤く焼けだしている。残念ながら東の空は背の高い雲に覆われて志賀高原の山々も見ることができない。これだと日の出も雲の上からだろう。ライト不要な明るさになったのは午前4時20分前後であった。本日のライト使用時間は2時間半弱でいつもより短かった。

 やがて唐松山荘裏手の2650m峰が見えるようになると、てっぺんで日の出を待つ人の光が見えるようになった。白馬岳の稜線も見えるようになったが、最初は雲が絡んでいたのが徐々に晴れてきた。

 登山道は尾根直上を通ったり南斜面を巻いたりしながら上がっていくが、最後は数年前に巻道が崩れたために尾根直上の冬道が夏道に化けている。岩っぽいが整備された道を登って2650m峰に達すると日の出の時刻を過ぎていたが、まだ太陽は雲に隠れて見えなかった。2650m峰には10人前後がいたが、ここから見る唐松岳にはもっと人が見えた。

 鞍部へ下って唐松岳への最後の登りの途中で太陽が顔を出す。そして賑わう唐松岳山頂に到着。南西の風がやや強く半袖半ズボンでは寒いので長ズボンに長袖、ウィンドブレーカを着用。フリースの手袋に毛糸の帽子を持ってきて正解だった。

 天気は快晴だが空気の透明度はイマイチで、八ヶ岳、富士山、南アルプスは全く見えなかった。北信の山々でさえ見えないほどで、今日は湿気が多いようだ。でも近場の北アルプスはぐるりと見えており、周囲の登山者は大展望を喜んでいた。辛うじて富山湾の海岸線は判別できた。山頂では30分ほど休憩して下山開始。

 帰りは花の写真撮影タイムである。山頂直下ではイワギキョウとコケモモ、ミヤマアキノキリンソウ、終わりかけのミヤマダイコンソウ。花ではないが雷鳥を発見。雷鳥は動くか鳴くか登山道上にいないと発見困難であるが、今回は距離が30mくらい離れた草付き斜面で全く動かない雌を見つけることができた。これも花を探してキョロキョロしていたからだからだろう。雌なのに子供がいなかったのは全滅してしまったのか、それとも今年はパートナーがいなかったのか。

 鞍部付近ではコマクサが咲いていたが既に終わりかけ。2650m峰を越えるとこれまた終わりかけのミヤマクワガタ、チシマギキョウ、ミヤマアキノキリンソウが中心。数は少ないがハクサンシャクナゲやイワツメクサも咲いていた。ハイマツの影にはゴゼンタチバナ。

 岩場から巻道に下るとミヤマコウゾリナかカンチコウゾリナの黄色い蕾。まだ両者を見分ける知識が付いていない。タカネヤハズハハコ、ウサギギク、タカネヨモギ、ミヤマホツツジ、ニガナ、エゾシオガマ、細かな種類は分からないがオトギリソウ、アカモノ、オヤマリンドウ、ネバリノギランなどが登場。終わりかけのチングルマ群落ではミヤマリンドウとタテヤマリンドウが登場。両者は非常に似ているが、タテヤマリンドウは花の中心部に斑点模様があるのが特徴。ただし個体差がありこれだけでは見分けるのが難しい場合があり、より確実に見分けるには花ではなく葉を見るのがいい。ミヤマリンドウは葉が茎から離れて両側に開いているが、タテヤマリンドウは葉が茎にへばり付いて閉じているので簡単に見分けられる。

 例年通りの場所にはムシトリスミレが花を付けていた。遅くまで雪が残る箇所ではアオノツガザクラ、ミヤマキンバイがまだ咲いていた。

 森林限界を割って樹林帯を抜けると八方尾根特有の植生に変わっていく。通常、北アルプスでの森林限界は2500m前後であるが、八方尾根では標高2300mより下部、少なくとも黒菱平のある標高1700m付近まで樹林帯が開けた森林限界のような植生が続く。そしてこの間に他の北アルプスの森林限界で見られる高山植物が見られるのだ。しかもリフトを使えば標高1850m付近まで労力をかけずに上がることができ、リフト頂上駅を出てすぐに高山植物に会うことができるため観光客も多い。

 花の種類はあまりに多くて文章で書くのは面倒なので写真を見て欲しい。ここでは八方尾根の固有種だけに触れておく。今回見た中ではハッポウタカネセンブリとハッポウウスユキソウが該当する。

 ハッポウタカネセンブリはタカネセンブリの仲間であるが、肝心のタカネセンブリを見たことが無い。ネットの記事では白馬岳にもあるとのことだが、この次の週末に蓮華温泉から白馬岳に登って目を皿のようにして探したが発見することはできなかった。おそらく登山道脇には生えていないと思われる。八方尾根上部ではヒメクワガタ並みの小さな花で見落としやすいが、リフト頂上駅付近では高い背丈の個体がある。青みがかった斑点がある花で覚えやすい。

 ハッポウウスユキソウはウスユキソウの仲間で、北アルプスではミネウスユキソウが一般的である。ぱっと見では両者の判別は難しいが、ハッポウウスユキソウの方が葉が細く、葉が斜め上を向いているとのこと。これは事前に違いを勉強しておかないと分からない程度の差でしかない。次に登るときには注意して見てみよう。

 八方尾根を下り始めてすぐに登りの登山者とすれ違うようになったが、八方池付近まで下るとその数はぐっと増えて観光客の姿が目立つようになった。月曜日だというのに結構な人数でびっくりである。おそらく観光客は八方池までであろうが、徐々に雲がかかり始めて池に写る白馬三山は見えないかな。多くの登山者、観光客とも八方尾根の植生の特異性は知らないようで、私のように花を探しながら歩く人はごく少数であった。

 八方池山荘を通過すれば人の姿はほとんど無くなり黒菱平へ。林道を下るのにリフト管理会社関係者に何か言われるかと思ったが何もなかった。林道終点でも何も言われることはなく、看板では立入制限が書かれれいるが現状では今まで通りに林道を歩くことは黙認状態らしい。

 駐車場に戻って濡れタオルで体を拭いてから運転席へ。林道は上がってくる車が結構いてすれ違いに気を遣った。

 

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